原因となる病気によって耳垂れの状態が違う?
耳垂れとは、耳の中から膿などの液体が出てくることをいい、耳漏(じろう)とも呼ばれます。原因となる病気によりさらさらした液体の耳垂れもあれば、膿性のもの、ねばねばとしたものもあります。
耳垂れが出る原因は?
耳から膿が出る原因としては、細菌などに感染して起こる急性中耳炎や慢性中耳炎が多いでしょう。さらさらした液体が出る場合は、外耳道炎や外耳湿疹、耳をかきすぎたことなどが考えられますが、外耳からの耳垂れでも細菌に感染すると膿が出ます。粘度が高く、ねばねばしている、グミのように固めの耳垂れは好酸球性中耳炎でみられるものです。
耳垂れを放置してしまうとどうなる?
中耳炎などで細菌に感染して耳垂れが出るということは、鼓膜の奥にある中耳腔に溜まった膿が鼓膜に開いた穴から流れ出しているということです。
耳垂れとその元になっている炎症を放っておくと、鼓膜に穴が開いたままになってしまい、風邪をひいたり汚れた水が入ったりして、慢性的に何度も病気をくり返すことになります。
耳が聞こえにくい状態から症状の重い難聴を起こしてしまうこともあり、真珠腫性中耳炎では周囲の骨が壊されていくので、重い病気の引き金になってしまうこともあるのです。耳垂れの症状がみられたら痛みがなくとも放置せずに、耳鼻咽喉科で受診し、しっかりと治療するようにしましょう。
耳垂れが出るときに考えられる病気とは?
急性中耳炎
耳の中にある中耳に炎症が起こり、進み具合により膿が溜まったりする病気です。痛みが強く、発熱があったり、耳から膿が出たりします。大人にも起こりますが子どもの方がかかりやすく、就学前におよそ6~7割ほどの子どもが急性中耳炎にかかるといわれます。小さなお子さんでは風邪をひくと急性中耳炎を疑ってもいいほど、よくかかる病気です。
慢性中耳炎
中耳に慢性的に炎症や耳垂れが起こる病気です。急性中耳炎が治ってしまわずに何度も耳垂れをくり返したり、細菌感染が起こり耳が聞こえにくくなったりします。急性中耳炎とはちがい、鼓膜に穴が開いた状態のままになっているため、中耳腔に膿が溜まっていても耳が痛むことはあまりありません。
真珠腫性中耳炎(中耳真珠腫)
真珠腫性中耳炎とは、鼓膜の一部分が中耳側に入り込んでしまい入り込んだ鼓膜に垢が溜まり、この垢に細菌などの感染が起こると耳垂れになったり、急速に病状が進んだりします。進行すると骨を破壊して、病変部分が大きくなっていく病気です。くさい臭いのする耳垂れが出たり、痛みがあらわれたりします。耳小骨が壊されると耳が聞こえづらくなり、病気が進行すると合併症として、顔面神経麻痺、髄膜炎、脳膿瘍など重い症状が出ることもあります。真珠腫性中耳炎には、先天性真珠腫と後天性真珠腫があります。
好酸球性中耳炎
好酸球性中耳炎は、中耳腔で、にかわ状の粘度の高い液体が溜まる病気です。慢性中耳炎型で鼓膜に穿孔があり耳垂れが出ることがあります。溜まっているねばねばした液体には、好酸球と呼ばれる白血球のひとつがたくさん含まれています。好酸球性中耳炎にかかる方は、先行して気管支ぜんそくを発症していることが多く、40~50歳代の女性がかかりやすいと考えられています。好酸球性中耳炎は診断がつくまでに時間がかかったり、治っても再発しやすかったりし、一度かかるとなかなか治りにくい疾患です。
耳垂れQ&A
耳垂れにはどのようなものがありますか?
原因によりますが、耳垂れの状態としては、しみ出してくるようなもの、さらさらしたもの、ねばっこい膿性のもの、ねばねばとした固めのもの、血が混じったものなど様々みられます。外耳道の湿疹や耳かきのしすぎで出るものは、しみ出るようなさらっとしたもので、細菌に感染すると膿性になります。中耳からの耳垂れは、中耳の粘膜から出るものは粘液性で、細菌に感染すると粘膿性となります。外傷などで髄液や内耳の外リンパ液が外耳道に流れ出したものは水のような水様性です。中耳や外耳道の傷、悪性腫瘍などの病気の場合は、組織破壊があるので血性の耳垂れが出ることがあります。
耳垂れが臭いのですが、どうすればいいでしょうか?
感染を起こしている細菌の種類によります。耳鼻科を受診して細菌の培養検査を受けて細菌の種類と抗生物質の感受性検査を受けていただくことで感受性のある抗生物質が判明します。もちろん耳垂れが多い場合は感受性のある抗生物質を探している間に洗浄などの処置で繁殖している細菌数を減少させ、においを減らすことはできます。いずれにせよ早く耳鼻科を受診してください。
耳垂れが出ても痛くありません。放っておいても治りますか?
痛みがなかったとしても、耳鼻咽喉科を受診してください。耳垂れと一言でいっても、元になる病気は色々あります。耳垂れがよくみられる中耳炎では、鼓膜に穴が開いてそこから溜まった耳垂れが流れていて、慢性化したものは痛みが出ないことが多くあります。痛みがなくても鼓膜に穴が開いているので耳が聞こえにくく、治療をしないで放っておくとくり返し炎症を起こし、重度の難聴になってしまうこともあります。手術によって治療できることもありますので、ぜひ早めに当クリニックにご相談いただければと思います。